私は2007年から約3年半にわたり、聖路加国際病院小児病棟で、犬と子どもたちのふれあいを軸に小児がんと闘う子どもたちの姿を撮影し、「わたしの病院、犬が来るの」という写真絵本にまとめました。そして、より深く掘り下げた大人向けのノンフィクションとして、このたび上梓したのが「犬が来る病院 〜命に向き合う子どもたちが教えてくれたこと」(KADOKAWA、1500円税別)です。
表紙の素敵な絵を描いてくださったのは酒井駒子さん!
聖路加国際病院の小児病棟には、月に二回、犬たちがやってきます。犬が好きな子どもにとっては、入院中に犬に会えるなんて、思ってもみなかった嬉しい贈り物。犬を撫でたり、抱っこしたり、おやつをあげたり、短いお散歩に出たりと、思い思いに犬とのふれあいを楽しみます。
日本初となる小児病棟への犬の訪問活動は、2003年の2月にスタート。小児がんなどの難病で、懸命に命と向き合っている子どもたちにとって、犬とふれあう時間は、ひととき病気のことを忘れて子どもに戻れる貴重な時間です。いまでは小児がんは80パーセント近くが治るようになったそうですが、それでもやはり亡くなる子どもはいるし、よくなって退院していく子どもたちも、病気によるさまざまな影響を受けています。入院中の経験がどれだけポジティブなものであったかは、どの子どもにとって、またその家族にとっても、大きな意味を持つにちがいありません。
どんなに病気で弱っていても、子どもたちは最後まで楽しむことをあきらめません。子どもたちの生きる力を引き出すために、また、人生に残された時間のQOL(生命の質)を高めるために、犬たちが果たす役割はほんとうに大きいと実感します。